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27時間考えた結果ちょっと見えてきた”剣と魔法の世界の創り方”

  

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photo credit: balt-arts via photopin cc

 

f:id:yukimid:20130501135812p:plain王道という言葉がありますが、王道を真に理解した者が覇道を進めるのだと思います。ファンタジー作品でもそうですね。王道をありきたりとせせら笑う者など覇道どころか、どの道の王たる資格さえありません。その旅路で果て、墓標無く、地に還るがよい!  

 

f:id:yukimid:20130501135814p:plainさて、話は変わりますが昨年からゴールデンウィークと夏休みに、ビジネスホテルに宿泊してひたすら作業に没頭するという「独り缶詰合宿」を行なっています。これはお金を出して”時間と環境”を買い、ある作業に対して「専業」という状態を生み出すことを目的としています。

2013年一発目ということで、今回は何を考えるかなあなどと2週間前ぐらいから考えていたわけです。27時間の宿泊プランなので、その27時間中ひたすらこもって考えて作業し続けることになります。なにをしましょうかね。ゴールデンウィークなのになにやってるんでしょうかね、ホントもう。

それこそこの缶詰合宿では、仕事のこととかブログのことなんかを考えたのが始まりだったのですが、どうも2回目以降から創作に関することにすべての時間を投入するようになりました。お金を出して仕事のこと考えるのは、どうにも性に合わないとぶん投げたわけです。それは今や神田川に沈んでいます。

今年はひとつの”人体実験”を行おうと考えていました。物騒な話ではありません、被験者は他ならぬ自分独りなのですから。

その人体実験が何を意味するかというと「想像力の限界(想像の世界を考え続けることの限界)を知る、また限界に近づくとアウトプットはどうなるのか」ということです。

これだけを読んでも、まとまった時間とある程度外の世界と隔絶した環境が必要だということがわかります。自分のペースで休憩などを挟む以外に、外的要因で中断などを挟んではいけないのです。確保した時間は27時間。ほぼ軟禁ですから、なかなかタフだったりします。実際、乾燥で鼻と喉が大変なことになりました。ミネラルウォーターは4リットル飲んでます。

 

f:id:yukimid:20130501135814p:plainその「想像力の限界を知る」ときに行われるのは、現状の私の場合「書いている小説の世界設定について考察する」ということになります。これについては実施する前から「限界はない」ということがわかっていました。というのも時間というリソースを投下し続ければ無限に拡張できるものなのですから。

ではそこから先でさらに何を目的とするのかというと「創作というもの、強いて言えば創作をする前段階作業でのメソッドの確立」を「制限時間を設けた上で」「書いている小説の世界設定について考察する過程でそれを達成する」ということになります。制限時間27時間で、”書いている小説の世界設定の考察”と”創作をする前段階作業でのメソッドの確立”が本筋になるわけです。

 

f:id:yukimid:20130501135814p:plain”創作をする前段階作業でのメソッドの確立”とありますが、どういうことでしょうか。私はストーリーの作り込みの前に、とかく世界設定の作り込み(それらを統合して”世界観の作り込み”という話に)をするためのメソッドというものが、自分の中で明確ではなく(方法論として確立出来ていない)、とりわけファンタジーを書きたいと考えた時に毎回毎回”共通して”登場するような設定を毎回毎回1から考えていたことを大変危惧していました。毎回毎回こんなことをしていてはリリースのスピードが落ちるわけです。

この”共通して”というのは例えば、登場する街であったり(以前書いた記事でこの点については言及しました http://colorfullife.hatenablog.com/entry/2013/04/15/081528 )、商業であったり、統治機構であったり……いくら幾万にも分かれる想像力の賜物たるファンタジーであっても登場する確立の高い設定のことです。街は街ですし、支配者は支配者、商業は商業なのです。

あるベースとなる”基本設計”の仕方(メソッド)さえ確立してしまえば、作品ごとの仕様追加というのにブレがなくなるのです。これはファンタジーというものを書き続けようとした場合ですね(それこそ現代を舞台にした学園ラブコメを書こうとしたら、このメソッドが使えないですし)。

この”共通して”の部分について、ここらで組み立て方をまとめてしまおうと思ったのが缶詰合宿開始前です。”創作をする前段階作業でのメソッドの確立”というのはこれを意味しており、原稿の進捗とは全く関係ないところに27時間をぶち込むということを行いました。

これはともすれば恐ろしい話です。そんなことやってないで原稿しろよ、ともなりましょう。後に書きますが私としてはその繰り返しから見えてくるのは、ただの疲弊と消耗と言葉は汚いですが自分さえもげんなりしてしまうような搾りカスでしかないと思うのです。「原稿しながらやれよ」と食い下がってきたとしても、こういうことは腰を据えてやれと右足で一蹴します。振り上げた拳を歯を食いしばって降ろすことも必要なのです。

 

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f:id:yukimid:20130501135814p:plainさて、趣旨はこうだとしても”どうやるのか”というところの話です。

フリクションボールを使うのは毎度のことですが、今回は市販の模造紙を持ちこみました。前回まで記入するノートはラージサイズのモレスキンだったのですが、模造紙というある意味最終兵器を投下しました。手に入りやすいものでこれ以上大きな紙はなかなかありません。

この写真を見る限りでも788×1085mmの模造紙ですから、ひとりの人間が思考していくにはちょっと大きいサイズかと思います。模造紙を広げ(実際広げられる机はホテルにはありませんが)、そこにこれから作ろうとしている世界のことについてありったけ書き出していくのです。

 

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f:id:yukimid:20130501135814p:plain27時間の結果、こうなりました。ガリガリ書いたところ、途中意識を失いながらも考え込んだところもありますが、記述の関係性を見ながら調整しながらみっちりと作品世界の世界設定について書き込みました。ストーリーに関係しないところが大半です。模造紙ほどの広さになると、ある箇所に書いた記述と今書いていることの内容をダイナミックに繋げることができます。これはノートでは出来ないことですね。ノートでいうところの1ページ目と16ページ目を視覚的に繋げるというのは、一枚紙でこそ成せるワザです。

今回の行動の目標としては模造紙全て使い切るとしていたのですが、残念ながら右下のスペースまで到達出来ませんでした。目標未達の未完成品です。

これは後日、再整理に合わせて埋めていこうと思います。というのも今回の合宿で出来上がった成果は、例えば1日1時間を27日間続けてやったことで得られる成果と全く異なります。だらだらと日々やってしまいそうなものを一気にやった結果、ここで出来上がったものが後の作業でどう役立てるかの方が大事だったりします。

うーん、A4ノートでいうとだいたい16ページ分の記入スペースですから、量的な成果というのはある程度はあったと思います。模造紙に書いたというのもインパクトありますしね。この「文字文字文字!」って感じ。この広大な空白は、空白を埋めたくなる人間の心理を飛び越して恐怖さえ感じます。

 

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思考し書き込んだ情報の量に関してはこれぐらいで(事実、量に関しては完全に納得できるものではなく、もうちょっと行けただろうというのが思うところです)。

 

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f:id:yukimid:20130501135814p:plainそれで、ここから見えてきたことですが。見えてきたことは

 

【作品の作り方について】 

・ファンタジーを創作するときにストーリーラインに乗ってこない大量の情報が、ストーリーラインそのものを安定させている。

・物語内部での”史実”とストーリーが進む”現在”に固定化された世界設定が、ストーリーラインの安定を生み出すための土台となっている。

・世界設定に登場する情報は遍く関連しあっている。

・「世界設定を考えるためのメソッド」については、確固たる方法は築けていないものの「神話、国、支配者、宗教、民衆、商業、工業、流通、争い」を軸に考え、またそれらの関連を見つけて補強していくのが良さげ。

・主人公はこれらの設定の上で行動するという絶対的な事実。

 

【想像力について】

・想像力は思いの外続くもの(※体力があるうちは)。

・疲れて脳の回転が遅くなると0から1を作るのは辛いけど、生み出してきた1から新しい1を作るのは意外と出来る 。

・良い作品をたくさん読むことも大事、自分が書こうとしている作品を考察するのも大事。

・資料などを読んでそれらを設定に活かすためには思いつきに頼らずに、資料からの引用と物語用に変換した過程と結果を自分の中で明確にしておく。

・想像力というものの源泉はどこかは”わからないけど”、ひとつ言えるのは源泉を枯らせないためには体力が必要ということ。

・体力マジ大事 。

・いやホント、体力大事だから。 

・あと、めぐりズムが気持ちよかった。

 

なかでも、

 

①ファンタジーを創作するときにストーリーラインに乗ってこない大量の情報が、ストーリーラインそのものを安定させている。

②物語内部での”史実”とストーリーが進む”現在”に固定化された世界設定が、ストーリーラインの安定を生み出すための土台となっている。

③世界設定に登場する情報は遍く関連しあっている。

 

については、創作をする上では今後も真に考えを進めるべき気付きだと思います。

というのも、これらはストーリーラインを作る上で抽出可能な要素でもあり、大前提としてここで構築されている情報の上でストーリーは進むからです。

 

f:id:yukimid:20130501135814p:plain①と②について言及します。ストーリーラインを下支えする世界設定についてです。前述した「とにかく原稿」という強迫観念に囚われているときに特に起こりがちなんですが、ストーリーを考えるあまり、ストーリーが進むに必要な設定をその場しのぎで作ってしまうという事象に対する自分なりの回答だと思います。結局のところ、原稿執筆時間とは切り離して考えるべき項目なのだなと。

「大長編を書いているわけではない」 と言われてしまうとそれまでなんですが、掌編だろうと長編だろうと考えておくこと総量の違いはあれど、矛盾なくファンタジーの世界を構築するためにはある程度の確定している情報が必要です。特に長編を書こうと思うのであるのならばここは避けて通れません。①のように、書き出したい欲求はそのままに、自分が書こうとしている物語を語り部たる自身が矛盾なく書き上げるためには、ストーリーラインに乗ってこない情報の蓄積が必要となります。それはストーリー構築時の安心にも繋がります。

これも時間との兼ね合いであるわけですが、「量をこなせ」という免罪符を振りかざしてこれを蔑ろにするのはいただけません。執筆に入る前の準備段階でいかにこれらのことを効率よく濃厚に行うかということに頭をシフトさせ、いざ執筆に入ったら「量をこなせ」のスピード感で物事を進めるというのがよいのでしょう。なーに悠長なこといってるんだというのは左足で一蹴します。創作脳?へぇーと流しながら、コーヒーを啜ります。

②については、これもストーリーラインから矛盾を消していくための行いであるのには変わりはないのですが、安定という意味では「ストーリーライン作成時の発想の安定」ということになります。ここで史実と現在という言葉を使っていますが、ことファンタジー作品を書こうとなるとお約束のように人や国や組織や建物が登場することになるかと思います。それらを執筆と同時に考えていくとどう考えても矛盾が生じます。それは話が長くなれば長くなるほど。

ですから、物語、ストーリーラインを作成する前に史実(その人や国や組織の歴史)を作成し、それが現在(ストーリーが進行する空間)にどう影響しているのかを考えておきます。そうすると史実に外れる、現在の状況に外れるストーリー展開を始めると自身でも矛盾を発見しやすくなります。ここで言えるのはファンタジーであれば”歴史”というものはストーリーが展開される時点に対しては絶対であり、ストーリー展開、登場人物の行動の根拠は昨日のこと数百年前のことでも影響を受けることになります。

③については、①と②を考えていくと自然と気がつく問題です。というのも、①と②を丁寧にやればやるほど、②に加えて自分が考えた世界設定の矛盾に気が付きそれを修正(整合性を改める)しなければならなくなるからです。その矛盾をあえて無視するならば、そこには作者の明らかな意図が生じます。

これはやり過ぎるとどこまでも進めることができるので、締め切りと自分の脳力との相談ともなりましょう。それとここで気がつけなかった矛盾について、後に気がつく、読み手に指摘される等あった場合、過度に恥じる必要なくここに戻ってくれば良いのです。

 

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f:id:yukimid:20130501135814p:plain上記の気付きについて、どうにかして例示できないかなあと思うわけです。

例えばあるファンタジーの世界で”シャワー”というものが登場したとします。シャワーです、お風呂場にあるシャワー。当の書き手からしたら当たり前のように登場したシャワー。

戦士様御一行が長旅の末にある宿屋に辿り着いたとします。部屋を確保し、一息ついたと。ちょっとした”お色気シーン”なんてものを入れようと思ったら格好のタイミングでしょう。御一行の女の子が汗を流すために衣服を脱ぎ、シャワーを浴びる……ここでちょっと待ってー!となるわけです。

”シャワー”……まさに文明の利器です。本当にそれは矛盾なくその世界に存在しているのでしょうか。シャワーというものが存在するということはどういうことでしょうか。考えるだけでも「給湯の技術が普及している」「お湯を送り出す機械(ポンプ)が発明されている」「湯浴びの文化がある」「各部屋にそれが設置されている、あるいは浴場というものがある」「衛生的な排水システムがある」などというポイントがあります。

こう書き出してみると、「そんなことまで書く必要ないよ!」と言われそうですが確かに書く必要などありません。書く必要はないのですが、考える必要は出てきます。この例で考えると、給湯というところでそれは薪を燃やした火なのか、それとも”魔法”なのか。「魔法だよ魔法!」の一言で「この世界では魔法を使って湯を沸かしており、ポンプで熱々のお湯を各客室のシャワールームに送り込んでいる」とするのは簡単です。ただ、ここで注意したいのは、ファンタジーにありがちな「魔法ですべてを片付けるご都合主義」に陥ることなのです。これは作者自身の発想力の枯渇に真正面をきって突き進むことになります。

ですから、ある描写に対して現実的な手段のアプローチするにしても、魔法などの非現実的な手段でアプローチするにしても、”考察”というものはある程度進めておかないといけません。「自分の世界の常識が、物語の世界の常識にはならない」し、「魔法は最も便利な思考停止ツール」ということは重々承知しておくべきことだなあと思うわけです。

冒頭から書いてきた「世界設定を考えるためのメソッド」の例示になっているのか、わかりませんがまあ、こういうことです。 もうひとつ例えると「魔法を使うのに必要な鉱石」なんてアイテムがあった場合、それを採掘するには、加工するには、運搬するには、といったことも考えを進める十分な要素ですし、そこで運搬の際に敵からその隊列を守るために傭兵が必要だったってなると傭兵が必要になってきますし、傭兵はどうやって雇われたのかとか考えていくと、ギルド(ファンタジーで最早おなじみになった)などの組合が必要になったり……と、数珠つなぎで考えることが増えて言うわけですね、また。この数行でも物語の主人公というものは登場していませんし、ただ、この世界設定の中で主人公を存在させるとしたらどこになるのか、いきなり主人公を考えるよりも楽そうではあります。

 

とりあえずまあ、お色気シーンならばそういうことふっ飛ばして書いちゃってもいいと思いますけどね(おい)

 

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f:id:yukimid:20130501135814p:plain今回の独り缶詰合宿では、自分の創作と主としているファンタジーというものに対してなかなか思考することが出来たと思います。原稿の進捗は1ミクロンも進んでいないわけですが、それ以上に創作をするための”基盤強化”が出来たというのは成果であると思います。強く、停止しない基盤を持っておいた方がいいのはシステムでも創作でも同じです。

物語の世界であっても人が生活する世界である以上は、創造主、語り部たる自分の構築への追求がその世界の豊かさに比例すると考えます。ですから、書くことの重要性はホントもちろんのこと、”書く”を行うための準備も入念に行なっていくべきだと思うわけです。「思考を止めない止まらないストーリー基盤」の構築作業。なかなか、難しいですけどね。

 

 

f:id:yukimid:20130501135812p:plainで、余談です。模造紙の写真をアップしましたが、じゃあ何を考えたのかというとこのブログでも昨年の6月頃に書いて、その後もちょくちょくと外伝的なものを書いているSHFについてです。実のところ昨年の執筆時では今回のようなことは行なっていませんでした。短編であったこと、それゆえストーリーを進めて投稿することに終始しており、設定上の矛盾というのはすべて目をつむった形になっています。いやはやちょっとこれはファンタジー作品にしては粗雑だったなあと思うわけです。 

そこで設定に矛盾のある場所は関連性を正し修正するなど、世界設定(世界観)について大幅に見直しを行なっています。今後、改題、方向性の変更(「7つの習慣」という要素を完全に裏側に引っ込めます)を含めたリテイクを予定しており、「王道中の王道をしっかりと作っていきファンタジーの作成メソッドを確立する」という目的に基づいて段々と動き出しています。このブログなりKDPなり何かしらの形で発表できるようにコツコツと進めていきます。

ではでは。