電子書籍時代の読書メモはどうあるべきなのか

Readerを買ったけれど……

Kindle Paperwhiteを使っているというのはこのブログでも何度も書きましたし、このKindle Paperwhiteの前にもKobo touchを持っていたというのも注意深い方ならおわかりかと。それでなんでこんな話を始めるかというと、つまりその、3台目が……。

 

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(左がKindle Paperwhite、右がSONY Reader。表紙がラノベで恐縮ですが)

 

新たに加わったのは、SONYのReaderです。

私としては、(ポイントカードに貯まったポイントをがっつり使って半額で買ったりなどして)買うことにためらいはなかったわけです。というのもこのReaderを持つことが、いよいよ始まった電子書籍時代における電子書籍リーダーの役割を理解するのに役立つかと思うたわけです(また、それを人柱と呼ぶわけですが)。そうして買った理由の詳細を①本の品揃え(ReaderStoreと紀伊國屋書店Bookweb)②解像度の違いを見るため ③端末固有の機能の違いとか書き並べるわけですがまあ、買ってしまったのなら仕方がない。

 

このReaderを買うにあたって、特に気になっていたことがあります。③の端末固有の機能についてですね。このReader、「Evernoteとの連携機能」があるのです。

気になりますでしょ? 電子書籍リーダーとEvernoteですよ。大手サイトなどではReaderのこの機能を「強力なEvernote連携」などと紹介されているわけです。

触る前までは「ほほう、やはりそうきたか」などと思っていたのですが、実際その機能を使ってみて思うのは、使う前までに抱いていたちょっとした期待というものを見事に裏切ってくれたわけです。いい意味で? いや、悪い意味で。

Readerに搭載されたEvernote連携機能についてちょっときつい口調で書くというのは意味があります。それは後に書きます”電子書籍時代の読書メモのあり方”に関わるからです。

今までそれが紙の束である本という物であった、それが電子書籍リーダーに代わった。とするならば、各社が出している電子書籍リーダーがどのような読書体験をもたらしているのかを注意して見なければ、それは今までにもあった”ただの”電子書籍を読む端末になってしまうのです(最近は家電量販店でも売り場が目に付くところになったからいいもの、以前までは……)。

 

ちょっと残念だったReaderのEvernote連携機能

Evernote連携機能を目当てにReaderを買うという方には「待ちましょう」と言わざるを得ません。そして「後々機能改善のアップデートがあるかもしれないし、もしかしたらないかもしれないから」と続けるでしょう。

まず良くないと思った点は大きくふたつです。

 

①同期が遅い

②ハイライト(マーカー)のEvernoteへの送信が単一ノート

 

①はとにかく端末の能力に依存するのでしょう。

Readerは同期するノートブックをひとつ選択することができますが、そのノートブックに膨大な量のノートが格納されていたら、同期が完了するまで延々と画面左上に表示される”ぞうさんマーク”の上の更新マークがぐるぐる回り続けます。EvernoteClearlyでクリップしたノートを見ることが出来るという説明でもありますが、Readerに最適化されたにしても、”ちょっと見る”にはいいにしても、Evernoteを持ち歩くという感覚には到底なりません。ちょっと見るのであれば、電子書籍リーダーで読もうとせずにスマートフォンでもいいではないかという反論さえ出そうです。でもまあ、これは仕方がない(スマートフォンでさえ同期にもたつくことがあるのに、電子書籍リーダーですいすい同期が出来るわけがありません)。

②は私にしてみれば致命的なことです。

ある本を読んでいて、気になる箇所がありましたと。その文なり単語なりを選択するとハイライトすることが出来ます。マーカーを使ってぴーっと線を引く感じですね。その後に表示されるメニュー画面から送信→Evernoteへとなるわけです。この時の操作が非常にもたつき、一本引いて一息ついて、一本引いて一息ついて……と読書のテンポがかなり悪くなります。

そうしてえっちらおっちらと送られたEvernoteには、「ひとつのハイライトに対してひとつのノートが作成される」のです。

 

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(例がラノベで恐縮ですが、一本に対してひとつのノートが作成されます)

 

つまりある本の中で100本ハイライトをしたとしたら、Evernoteには100のノートが作成されることになります。それらのノートは本ごとにマージされたりはしません(そして自分でマージをしようとすると、あの”ダサい”ノートが出来上がってしまうのです。専用のiPhoneアプリでマージすれば云々という話でもありません)。

 

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(このマージに対しては無言で)

 

さらに言えばそれが何ページ目か、その本の詳細情報へのリンクもないわけです。そこにハイライトを引きましたよという情報だけがEvernoteに保存されます。

読書メモとしてハイライト機能を使っているのに、こうも格好が悪いと、うーん、全然スマートじゃない。

 

比較としてKindle Paperwhiteを使った場合はどうなるのでしょうか。

Kindle Paperwhiteでハイライトをし、PCからAmazon Kindleにアクセスして該当の本に引いたハイライトを一覧表示、それをブラウザのクリップボタンでEvernoteに送信。

 

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この様になります。ひとつのノートにひとつの本の中で引いたハイライトが記録されています(ページがまたがったら分かれてしまいますが、1ハイライト1ノートよりはマシです)。 書籍名がAmazonの書籍詳細へのリンクとなっています。

このふたつを比べた時、私はReaderが謳っていた”Evernote連携機能”にひどくがっかりしたわけです。Readerはパソコンを介さずにEvernoteに保存できるという点で機能的ではありますが、電子書籍に引いたハイライトを読書の記録としてEvernoteに保存するならば断然Kindle Paperwhiteだと思ってしまいます。

この”がっくり”は、私が考える「電子書籍時代の読書メモのあり方」に寄る所でもあります。読書の記録としてどちらが”かっこいいか”って、そりゃね。

 

 

直感の記録

前半はReaderへのうらみつらみとなってしまいましたが、Readerは後のバージョンアップなどで、読書とEvernoteについて真剣に考えたうえでの機能追加がされたのなら私は泣いて喜びます。そこのところ、ちょっと期待しています。

さてふたつの電子書籍リーダーでハイライト機能の違いについて見たわけですが、ここでほとんどの電子書籍リーダーに標準搭載されているハイライト機能とそれが実現する電子書籍時代の読書メモについて考えてみます。

私は電子書籍リーダーで行うハイライトを「直感の記録」と考えています。

 

情報が紙の本の中に閉じ込められる

紙の本ではマーカーを引いたり、ボールペンで線を引いたり、付箋を貼ったり、ページの角を折ったりしてそこに「私がグッと来たこと」があると目印をしていました。これも直感のひとつでしょう。引きたくなるのです、線を。留めておきたくなるのです、そこに何か感じるものがあったということを。

しかし、実際に手を使って書いたり貼ったりするということのメリットを差し引いても、たくさんやり過ぎるとその本が”大変なこと”になってしまうのは経験したことがあるのならわかるはず。それもそれで味がありますが……。

さらにその本に引いたマーカーや線をすべて覚えて内容を飲み込まない限りには、本を閉じた瞬間にその情報はその本の中に閉じ込められてしまいます。同じような記述のある別の本にマーカーを引いたとしても、慣れていない限りにはその2冊の関連性を発見することは出来ないでしょうし、また出来たにしてもなかなか確率は低く、気が付かずに通りすぎてしまうことでしょう。慣れるのも時間がかかりますし、読書ノートを取るのも多くの人は面倒に思えてしまって継続できないでしょう。

こうしたマーカーや付箋を貼るといったことは私も好きなのですが、なかなか利便性の追求という点では厳しいことがあります。

 

もっと直感を信頼して引く

電子書籍リーダー(ここではさらにアプリも並べましょう)で読書をするときに引くことになるハイライトは、ほぼ無制限です(※Kindleでハイライト数に制限があるというような情報もあります。確認が取れ次第この記述は取り消し線を引き修正します)。さらにハイライトを送信する際に、ReaderもKindle Paperwhiteもメモを付けることが出来ます。

紙の本と同じで無闇矢鱈に引いてめちゃくちゃにしていいという話ではありませんが、紙の本よりも”直感を信頼して引く”ことができます。どういうことでしょうか。

前半でReaderのハイライト機能を”ディスり”、Kindle PaperwhiteでEvernoteにハイライトを保存する例を出しましたが、電子書籍時代の読書メモではこうしたウェブサービス(ここではEvernoteのこと)との連携が可能になるのです。

そうすると何が出来るのか。Evernoteで言えば「数多あるハイライト(読書メモ)の横断検索」が出来ます。ノートに対してタグやノートへの記入といった情報の追加も可能です。

紙の本では各本(2冊、3冊、4冊……間と増えていく)の関連性を見出すのは、慣れなければ難しいものでした。しかし検索というひとつの行為によって、情報は抽出、一覧化され、それらを基に本同士の関連性を見つけることが出来ます。

 

検索と関連付け

ここで言いたいのは、Evernoteで検索し関連性を見つけることが出来るという仕組みの後ろ盾があって、電子書籍リーダーでの読書中にハイライトを臆することなく、後の活用のためにもっと直感を頼って引くことが出来るということです。前述したような情報が本の中に固着してしまうのを防ぐことが出来るのです。

Evernoteというサービスで、直感は記録され、それらに結びついた本たちそれぞれが検索でつながります。読書によってもたらされた記録が、より強い繋がりを見せるのです。

それをどう活用するかは本人次第ですが、読書メモをとるという行為は強く主体的な行為です。何かしらの目的があるのであれば、電子書籍とEvernoteを使った読書メモというのはより強力なサポートをすることになるでしょう。

こういったことが、電子書籍時代の電子書籍リーダーが目指すところの”強力なEvernote連携”だと思うのです。

 

電子書籍時代の読書メモ

電子書籍リーダーとさらにはスマートフォン、タブレット用のアプリケーションが続々登場し、ストアは分断され、読みたい本は遠く彼方のストアにあるなんてことが生まれている昨今です。電子書籍リーダーを複数買ってしまうわけです。ただ 電子書籍というものが大きな潮流になっているのは言うまでもありませんが、そうして行われるのはあくまでも読書なわけです。”ただの”読書ですが、確実にその行為は進化しています。
 
電子書籍リーダーを中心に、ハイライト機能による読書メモ のあり方を考えてみましたが、電子書籍時代ではより読書メモというものは”なんとなく読んだ気”から”読んだ”という証拠になっていくのだと思います。読んだという記憶が記録に変わり、その記録がその読み手の工夫次第で次々に繋がり、新たな創造を生み出すとしたら。
 
検索、関連付けと情報の追加という要素が読書メモに加わったいま、それを味方に付けないわけにはいかないでしょう。すべては新たな読書体験のためにありますし、その読書体験を味わって見ることもまた読み手であることの醍醐味であると私は思うのです。