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KDPで個人出版社になることと本棚が無限に増殖し続ける本屋Kindleストア

 

シゴタノ! KDPを始めるまえに学んでおきたい3つのこと

 

 

 

 

(難しいんです、本当に。”個人出版”とは”作家デビュー”ではなくて、”個人出版社”になることなんです。でも多くを学ぶことは出来るのです)

 

Amazonはどうした!Kindleはどうした!と日本に到来する黒船を待ち望む声と、日本の本が食い潰される!と息巻く声の両方を受けながら昨年、AmazonによるKindleストアがスタートしました。

ここで”電子書籍が紙の本を食い潰してしまう”という論調で話を進める気もありませんし、”紙の本は無くならない”という論調でももちろん話をしません。すべての紙の本がなくなるという状態がすぐに訪れるかどうかを考えるのであれば、そのときは本屋さんが今の本屋さんである必要はなく、キオスク的な規模でいいじゃないかとか。いや、すべての紙の本がなくなるという状態がとても地球滅亡の予言に怯えることと同じような気がしてならないとか。”減るけど無くならない”ぐらいの心構えぐらいで、”紙の本”も”電子の本”も等しく読書のために手にすればいいのです。根源的に我々は、ただ、読書がしたいのです。

 

さて、Kindleストアのサービス開始とともに驚きを持って迎えられたのが”Kindleダイレクトパブリッシング(KDP)”の開始です。KDPの開始は難しいあれやこれやがあって遅れると思っていたのですが、思いの外、日本でもすぐに開始されました。

KDPは個人出版サービス(※自費出版ではありません)ということになるのですが、KindleストアとKDPの日本でのサービス開始は一言に”本を流通させるひとつの場”が登場したということなのですが、これの捉え方はひとによってそれぞれのようです。私はこの点について、「”本”を出すことのハードルは下がり、”本”を流通させる高いハードルが”見えるよう”になった」と考えます。手軽になったことで解決すべき問題が増えたという典型例の様に思えるのです。

AmazonのKDPのページには以下のように紹介されています。

 

Kindle ダイレクト・パブリッシング (KDP) は、Amazon Kindleストアで本を出版するためのサービスです。以下の利点を活かして、KDPで本を出版しましょう。

無料で簡単 出版にかかるコストは無料です。

世界中で販売 Amazonの販売チャネルを通じて、世界中の読者に本を販売できます。

いますぐ出版 出版手続きにかかる時間は5分、本は48時間以内に販売されます。

70%のロイヤリティ KDPセレクトに登録すると、日本でも70%のロイヤリティを獲得できます。

多言語対応 日本語、英語を含む7か国の言語で出版できます。

利用可能端末 Kindle端末・Kindle無料アプリで本を読むことができます。

via: Kindle ダイレクト・パブリッシング: Amazon Kindleストアで出版

 

こう書かれていますが、つまるところ「個人で”本”を作成し、それをKindleストアという巨大な本屋さんに置くことのコストはかかりません。お客さんがレジで会計したときに、手数料を差し引きます(ロイヤリティを70%にする場合は”別のルール”がありますけど)。置く本は日本語でも英語でも良いです。ただし、Kindleで読める形態の”本”でお願いします」ということ。

そうするとKDPにとってのKindleストアは巨大な”本”屋さんだと考えるのが、今のところ一番わかりがいいのかなと思うのです。そしてKDPは”個人出版社”になり、Kindleストアという本屋さんと契約をすること。営業となって、その巨大な本屋さんに納品するときはAmazonの担当者にひとこと声をかけてから”無限に増殖する本棚”に置いておく、と(説明として、実際の手続き上の問題は端折っていますが)。

KDPとKindleストアの登場が同時であることは、つまり、お店に”本”を買いに来るお客さんと、お店に”本”を置く作者(=個人出版社)と、”本”を置く”本”屋が同時に出現したことになるのです。

 

さて、「お客さん(Kindleストア利用者)と個人出版社(KDP利用者)と本屋(Kindleストア)の登場」と説明しましたが、そうすると「KDPで簡単に自分の本が出版出来るのか!」と淡い期待がむくむくと膨れ上がるわけです。もしかしたら「本を出版しているというステータスが自分の人生に加わるのではないか!」と。確かに。

しかし、こう考えるためには、ものすごく大切なポイントもあるのです。「本を出すことのハードルは下がっても、本を流通させる高いハードルが”見えるよう”になった」と前述したました。KDPで、誰しも本を作ったという経歴を持つことが出来るようになります。誰しもです、そしてそれが”本棚が増殖し続ける巨大な本屋さん”に置かれるのです。さて、どうなるのでしょうか。どうなるも、埃を被った自分の本が思い浮かびます。無限に増殖する本棚にうねりに飲まれてしまうのです。

(話は変わりますが、本を出版するとなると「App Storeで自分の”アプリ”が販売できるのか!」ということよりも、どうして身近に手近に感じてしまうのでしょうか。それは本というものが文章を書くという誰しも持ち得ているスキルで作れてしまうからなのでしょう。何にせよ、幼稚園児でも本は作ることが出来るのです)

 

本を作る、それを本屋さんに置くというハードルがKDPに代表される個人出版サービスで下がったと考えますが、実際には次に来るハードルが上がっています。それは本を流通させるということです。つまりこれまでは出版社の人たちがその経験とスキルとその足で、作者に代わって行なっていた”仕事”です。それに近しいことを個人で行わなければならない。

KDPを利用して本を出版したにしても、Kindleストアには”置いただけ”になります。始めから平台に置かれることもありませんし、POPがつくこともありません。さらにいえば、本屋さんで作者交流イベントが行われるわけでもありません。Kindleストアに置いた”私の本”は、放置されるのです。さらに言えば、KDP利用作家の増加に合わせてその本屋の本棚は無限に増殖し続けます。冗談ではなく。Kindleストアに本を置きに入った作家さんが本屋の中で遭難して……という物語が出来そうです。

 

「本を出版すること」の充足と、「本が売れること」の充足は別物であると考えたほうが良さそうです。前者はこれまでの流れで解決しています、まさに「あなたは本を出版することが出来た。おめでとう、コングラッチュレーション」。しかし後者についてはKDPもKindleストアもそのハードルを下げてはいません。

これを解決するために必要なのが、本を流通させるための技術であって、それはブック(表紙)デザインであったり、マーケティングであったりするわけです。うむ、難しい。これについて「ではどうすればいい」ということをここで明確に書くことは出来ません。KDPとKindleストアに限らず、唯一絶対の解はどんな商売にも存在しないのですから。

 

出版することは簡単になりました、しかし出版した本を売ることのハードルを自分で超えなければなりません。個人出版社なのですから。「本を出版すること」そして「その本が売れること」このふたつの欲求は往々にして背中合わせです。「本を出版すること」に投入する時間は多い、その投入した時間に対する満足、充足は何から得るのか。「その本が売れること」に求めるならば、学びと経験をKDPとKindleストアまたそれ以外の場で繰り返すしか無いのでしょう。

しかしまあ、実に面白いことになってきたわけです。そうは思いませんか?