電子書籍リーダーは自炊PDFリーダーではないという理解

 
kobo touchが永遠の眠りについたあと、私の部屋には純粋たる電子書籍を読むための端末が消滅しました。そしてkindle paperwhiteが目覚めるわけです。iPadにiPadminiにiPhoneに、Nexus7にGalaxyNoteに、それらも確かに電子書籍を読むための端末とも考えられますが、あくまでアプリケーションのひとつとして提供されるに過ぎず、文字を読み尽くすための端末とはどうにも言えないような気がするのです。つまり、文字を読み尽くす”だけ”に止まらず様々なことが、あまりにも様々なことが出来過ぎてしまうということなのです。
 
さて、純粋たる電子書籍を読むための端末なんてわざわざ書き分けていますが、こういった端末(あの”独特の”ディスプレイを備えた電子書籍リーダーとします)、特にここでは最近手にしたkindle peperwhite 3Gについて考えるにあたって、ひとつ重くのしかかる問題があるのです。というのも、私がよく目にする発信者たちの中で漫然と存在している”自炊PDF”のことなのですが。これを、この純粋たる電子書籍を読むための端末で扱おうとすること、またそれを最たる目的とすることに、なかなかの違和感を覚えるわけであります。
 
kobotouchそしてkindle peperwhiteと使ってきましたが、どちらもストアから配信されている本(PDF以外のフォーマットで整形された電子書籍)を読むには大変優れていました。これはまさに電子書籍リーダーとしての機能を十分に備えていることの現れで、本来の目的は十二分に達成されている商品なのです。あとは日本語対応の問題や、読みやすさというユーザーの読書体験にどこまでリーチ出来るかの問題で、それらはその電子書籍リーダーとしての最低限のラインを達成しているかどうかというよりも、もはや製作段階でのセンスの問題でもあるのです。今後、とんでもないセンスを製作者たちが発揮した電子書籍リーダーが同情することを願うばかりです。
 
では、自炊PDFというものを考える時に何が問題になってくるかというと、「自炊PDF=歴とした電子書籍」であり「それらは純粋たる電子書籍リーダーで読めて然るべき=電子書籍リーダーの評価は自炊PDFが読めるかどうかのみ」といった論調を少なからず見かけることなのです。
その発端と動機は、それはそれで良いと考えます。私も本の自炊をしますし、それもちょっとやってるという話ではなくなってきた量なので、円の外側で傍観者的にこの話に関わるということを行動が許さないのです。ただ、そうした経験を持つ私自身が、純粋たる電子書籍リーダーを手にした時に感じたことは、「これらは自炊PDFを読むための端末ではない」ということです。つまるところ「PDFリーダーではない」ということなのです。
 
これらの端末を作製する側が、PDFというものを「読み込むことができるフォーマットのひとつ」として扱っているならば、上述した「PDFリーダーとしての性能」で評価しようとすると恐ろしいほど評価は低くなります。手軽とは思えない容量になる場合もありますし、それを快適に閲覧して行くとなると、そもそも端末のパワー不足。なおかつページめくりを縦書き用に設定することが出来るかどうかも、本の自炊というものがまだ”マイナーな行為”である以上、それを作製する側が”気を利かせて”実装しているかどうかの話になります。いやはや、グローバル展開されるような端末に、日本という、しかもその日本の自炊PDFの快適な閲覧を望む層の願望を満たすような仕様をつけてくるかというとそれもまた疑問。
 
そもそも自炊PDFというものを用意することがマイナーであること、それが純粋な読書体験としてどうなのかという根本の問題ですが。というものは、快適に読むための準備(読書体験のための代償とでも言いましょか)があまりにも多く、手間や費用が現状多いのです。裁断して、読み込んで、PDFにして、余白を切り取って、Acrobatでサイズダウンして、Dropboxなりに入れてダウンロードして、そうでなければSDカードに保存して読み込んで……と。純粋たる電子書籍リーダーが提供しようとしている、書籍を読むということの簡便さを己から殺しにかかっていると思えてしまうのです。その端末が提供しようとしている最高の読書体験に劣る読書体験をわざわざそれで実現しようとするのも、考えれば考えるにほど妙に思えてきて。こうした根本に孕む問題も含めて、純粋たる電子書籍リーダーと自炊PDFの関係を考える時の、私の中でひとつの結論にたどり着くわけです。「自炊PDFを読みたい、しかも快適に読みたいのであれば、純粋たる電子書籍リーダーはスマートフォンやタブレット以上の選択にはならない(現状は)」ということ。
 
ですから、未購入な方にkoboやkindleを勧める際には、「本の自炊とかする?」と訊くようにしています。電子書籍リーダーで達成される読書体験を差し置いて、自炊PDFを読むに値するか快適に読めるかどうかについての解決がその人の達成したい願望なのだとしたら、ちょっと待てと言わざるを得ない現状があるからなのです。たぶん、幸せにはなれないと思うから。