冒険者は宿屋で目を覚まし、洞窟に向かう。誰が止めるでもなく、何度も。

f:id:yukimid:20120603155121j:plain

photo credit: fireflythegreat via photo pin cc

 

なぜ宿屋のベッドに寝ているのだろう。

洞窟の中では、確かに戦っていた。

戦っていたことは覚えてる。

下腹部に一撃を食らったことも覚えている。

粘性のある液体が指の合間を流れ落ちたことも。

朦朧とした意識の中、右手の剣を振り回したことも。

それが宙を切っていたことも。

しかし、それで勝ったか負けたかは覚えていない。

 

順調な歩みだった。

いつになく興奮していたし、それが油断を生んだのかもしれない。

不意打ちを受けた際に、松明を裂け目に落としてしまったのだ。

奈落に落ちていく灯りが、小さくなっていく。

先ほどの嬉々とした興奮とは、別の興奮が湧き上がる。

がむしゃらだった。

絶命する魔物の声が消えた時、水を打ったように静まり返る暗闇の中にいることを知った。

戦うことではなく、光を失うことがなによりも恐怖だ。

前に進むこともままならず、戻ることさえ躊躇われた。

それがなぜ、宿屋のベッドで目を覚ますことになるのか。

 

いや、ちょっと待てよ。

このあとベッドから起き上がり廊下に出た私は、宿屋の主人と鉢合わせることになっている。

主人は私にこう聞いてくるのだ、「やあ、おはよう。いよいよ洞窟に行くのかい?」

なぜかそれを知っている。それはなぜか。聞いたことがあるからだ。

 

そこでようやく事態を飲み込むことが出来た。

ああ、そうか。

またあの洞窟に足を踏み入れなければならないのか。

 

 

 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

 

 

なにもこれはRPGのなかの話ではなく、現実でも起こりえます。

洞窟に潜むボスを倒しに行くわけではありませんが、現に私もこのような状態に陥っていました。

 RPGでいうところの冒険者は、長い長い洞窟での戦いの末、敗れ、そして宿屋のベッドで目を覚まします。

洞窟で手に入れたはずのアイテムや経験値は一切失い。

洞窟に入るまえ、宿屋でセーブ(記録)した直後の自分に戻ってしまうのです。

 

 

毎日毎日毎日毎日、何かを繰り返していたはずなのに、日曜日と月曜日の間でそれらはすべて消え去ってしまう。

月曜日になったら月曜日になったで、なにも思い出せない。

先週何をやったか、何が出来て何が出来なかったのか。

どういう気持で、どんな行動を発言をしたのか。

月曜日に何かを始めようとした時、「またか……」そう頭を抱えてしまうのです。

 

 

週を重ねるごとに増していく既視感は、ともすれば新しく始まったはずの今日という一日をひどく色あせたものにしてしまいがちです。

わかっているのに、毎日毎日同じ事を繰り返してしまう。

繰り返しては繰り返したことが積み重ならない。

現実世界では経験値は目に見えず、アイテムなんぞは手に入らない。

 

それはあるとき苦痛に変わります。

代わり映えのしないことを、わけもわからず繰り返すことが苦痛。

なぜ繰り返すのか、なにをしているのだろうか。

 

ただ、これに対する回答をひとつだけ持っています。

いまのところの、ひとつです。

その週に他の週とは別の意味付けを行うことです。

それまでに重ねた日々を纏めあげ、重なった7つの日に意味付けを行う。

お分かりでしょうか。

 

なんのことはない。

”週次レビュー”です。

(結局、それかいな!

 

 

でも私が週次レビューを意識して行うようになった理由は、洞窟に挑み、宿屋で目を覚まし続けるこの冒険者の想像で語ることが出来るのです。