”情報整理”は何のため?

(自分はiPhone、モレスキン、トラベラーズノート……使っているけれども)
日本科学未来館で開催されている「ウメサオタダオ展」に行って来ました。
念願ですよ。
日本科学未来館で開催されると聞いて「うおおおおおお!!!」って言いましたもの。
梅棹忠夫さんといえば『知的生産の技術』を書いた人といえばわかりますかね。
しかし最近までは自分も『知的生産の技術』しか読んだことがなかったんですね。
そうすると梅棹忠夫さんは「なんか情報整理が凄いおじさん」という認識ぐらいのものだったんですよ。
かつて「iPhoneで情報整理!」という言葉に踊らされてAmazon先生が薦めてきたから読んでみた、というのでした。
私にはそういう過去があります。
でもこの展覧会で梅棹忠夫さんの「情報整理術」が、「iPhoneで出来る!」とか「アプリで簡単に!」という次元で語られる「情報整理術」とは全くもって次元の異なる話であったことを痛感しました。
”方法と道具”は時と場所で選択される

―― あるきながら本をよみ、よみながらかんがえ、かんがえながらあるく。 (『梅棹忠夫のことば』)
展示は凄まじいものでしたよ。
ノートの山、スケッチの山、情報カードの山……山々山々……。



これを見て、キミは、震えないかい?
私は震えましたね。
蓄積された”情報”は膨大になると凄みが生まれます。
これらを生み出す所以である民俗学の研究。
フィールドワークの過程。執筆した論文の下書き。
著作の山。
写真撮影可だったのでバシバシ撮ってしまいました。
これだけの情報を浴びていたら、「ああああああーーーー!!!」と叫びたくなるものではないのでしょうか。
常人が管理できる情報の総量を遥かに超えている。
その事実を表す展示に圧倒されるのです。
それで展示を観ているなか、ふと考えたのです。
もしですよ。
『もし梅棹さんが、iPhoneとEvernoteを使っていたら』
京大式カードなどを使っての情報整理術は生まれ得なかったのでしょうか。
考えるまでもなく、その答えは否だと思います。
”フィールドワークの巨人”と呼ばれるように、研究者(梅棹さんのことばを借りるなら「冒険者」)の梅棹さんはとにかく現地での調査に精を出しました(研究対象が民俗学ですからね)。
未開の地にも足を踏み入れるのです。
そこでiPhoneが使われるのでしょうか。
いいえ、ノートとナイフで削れる鉛筆が使われるでしょう。
そして、その情報をまとめる際にiPhoneやEvernoteを「おっ、なかなかいいじゃないか」と思われるかもしれません。
それは研究室での話です。
つまるところ、梅棹さんがこれだけの情報を収集して管理できたのは、
それぞれの行為が行われる時・場所で適切な方法が用いられていたからなのではないでしょうか。
「タイプライターすげえ」って時代なのですから、iPhoneを持ってくるのは比較にならないかもしれません。
しかし私が梅棹さんのように、未開の地に研究をしにいくとなったらiPhoneは荷物以外の何モノでもないと感じるでしょう。
そしてノートや厚紙の情報カードと、濃い鉛筆を持つことでしょう。
その行為に合った道具が選択されるのです。
さてここで、現在の自分に立ち返ってみましょうか。
未開の地に冒険に行かない自分です。
その”情報整理”は必要ですか?
ライフハック系のブログなどで「情報整理術」として紹介される様々な方法、アプリ。
Evernoteが有力ですかね。
それこそRSSリーダーを使用して、Evernoteを使用して、インプットを最大化する!のような。
どれも試行錯誤の末に生まれた素晴らしい方法です。
しかしそれらを見たあなたが”情報整理”を始めようとしたとき、その方法・道具はあなたの目的に合っているのでしょうか。
ウメサオタダオ展で感じたことです。
”情報整理術”というものは、その人が得た情報の総量によって方法も道具も変わるということ。
梅棹忠夫さんが産み出した情報整理術は、本人が一生を賭けた研究によって生み出されたものです。
目的に向かう過程で増えに増えた情報を捌く方法が、この展覧会で展示されていたもの”だった”のです。
目的を果たすために生み出されたものが、人を圧倒させ驚嘆させるような管理システム。
とりあえず”情報整理術”を学べば自分が扱える情報が勝手に増えて「使いこなしてる俺、なんかかっこいい」みたいな話にはならないということなのです。
”情報”をなぜ集めるのですか?
そしてなぜ”整理”しようとするのですか?
自分に問いたくなってしまいます。
ただ「iPhoneやEvernoteを使いこなせてない自分がカッコ悪い」からという理由で”情報”を集めていませんか?
簡単に手に入る方法と道具を使って、爆発的に拡がる情報のフィールドに入り込んで、何を獲ろうというのでしょうか。
問いましょう。
あなたのフィールドはどこにありますか?
そこで何を得ますか?
それらによってあなたの”情報整理術”は生まれ、あなたの手によって活かされていくのです。
――人生をあゆんでいくうえで、すべての経験は進歩の材料である。(『知的生産の技術』)
それでは、どこかの誰かさん。あなたに彩のあるカラフルな日々を。