書感SS

【書感SS】夏待ち(ハンザ『同盟』の歴史)

人の背丈以上にある大きなガラス窓が初夏の日差しを取り込む。昨晩の雨の名残でもあるしっとりとした少し強めの風が、部屋の入口から入り込んでは彼の座る番台の帳簿をパラパラとめくった。 首を回さずとも見渡せそうな小さな部屋だ。ただ窓際でないと、少々…

【書感SS】ヨーロッパ中世社会史事典(書物 Livre)

待たせてしまってすまない。前の話が立て込んでしまってね。 早速話を始めよう。こんな小さな部屋で立ち話というのも申し訳ないがね、あいにくここにはゆっくり話をする場所というものがないんだ。 話と言っても大した話ではない。大した話ではないのだが、…

『そのとき、本が生まれた』

photo credit: wallace39 " mud and glory " via photopin cc 海鳥の嘶く声が辺りに響き、打ち付ける波の音は街が動き出すその始まりを盛大に告げていた。接岸する船舶から威勢の良い掛け声とともに陸揚げが行われる。腕っぷしの良い船乗りたちが、船に積み…